本の紹介

【本】ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」感想(広告)

2020/06/13

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は多様性を子どもの視点から描いた日常的現実

子どもの感性の豊かさを感じるエッセイ

今回は英国ブライトン在住のライターブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」について紹介します。

福岡県福岡市生まれ。貧困家庭出身。日本在住の頃からパンクミュージックに傾倒し、ジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)に感化される。福岡県立修猷館高等学校を卒業して上京&渡英。ロンドンやダブリンを転々とし、無一文となって日本に戻ったが、1996年に再び渡英し、ブライトンに住み、ロンドンの日系企業で数年間勤務。その後フリーとなり、翻訳や著述を行う。英国在住は20年を超える。

2017年、『子どもたちの階級闘争』で第16回新潮ドキュメント賞受賞。2018年、同作で第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で第73回毎日出版文化賞特別賞受賞、第2回Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞、第7回ブクログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)受賞、第2回八重洲本大賞、キノベス!2020 第1位。

Wikipediaより)

本作の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は様々な賞を取っています。

 

今回最も悩んだのがタイトルでした。

私は勤めている外資系金融企業の中で多様性について取り組んでいて、その多様性に関する課題を解決したり、サポートをする組織の創設者です。現在もその組織のリーダーをしています。

全世界のリーダーとともに多様性について、日々考え様々なプログラムやトレーニング、活動を行っています。

ですが日本においてそして企業の中の数千人に対して多様性を人に伝えるのは簡単なことではありません。

外資系企業という一般的な人から見ても特殊な環境においても多様性は一般的な話ではあるものの自分ごとではありません。

外資系企業では多様性について必ず語られます。同僚が必ず「自分と異なる」からです。

これは人種だけでなく様々な視点から「異なる」ことを指しており企業はそれを尊重しています。

多様性を尊重している企業はイノベーションとそれに伴う売り上げが高いことも調査の結果明らかになっています。

イノベーションを生み出すために、企業はどのような組織づくりを行えばいいのでしょうか? BCGは米国や中国など8カ国において1,700社以上の企業を対象に、6つのタイプの多様性――性別、年齢、出身国、キャリアパス、他業界での経験、教育――の観点から、企業の多様性の度合いとイノベーションの水準の相関についての調査を行いました。その結果、経営層の多様性を高めると、企業のイノベーションが質・量ともに向上することが明らかになっています。本稿では、調査結果の分析と、多様性を高めるために企業がとるべきアプローチを紹介します。

Boston Consulting Group調査より

 

ですが世界の名だたる企業においても、多様性については課題を感じている状況であるのも現実です。

具体的な施策を常に打っている企業でも課題を感じているのです。

 

日本においてはどうでしょうか?

2018年エンジャパン が行った「企業のダイバーシティ」実態調査によって得られた回答は以下の内容でした。(調査数563社)

 

 

私が日々実体験を通して大企業など各社へヒアリングしている限りだとこれはだいぶ状況と乖離がありそうです。

聞いている限りだと制度はあるが利用者は0というのが一般的であり、これを「実施している」と呼ぶのはなかなか難しそうです。

日本においては多様性について、課題が今後も継続して存在していくでしょう。

我々の周囲には日本人「以外」の人種の人がたくさんいるにも関わらず自分ごとにはなりづらいのです。

なぜならば島国かつ基本的には単一民族ゆえに身の回りにあるはずの多様性に気づきにくくなっているからだと思っています。

または自分にとって関係がないことなので無関心であると考えられます。

日常的に日本人以外の人が周囲にいるでしょうか。

また日常的に日本人以外の見た目の人が周囲にいるでしょうか。

日常的に「普通」と呼ばれる人以外の人と接しているでしょうか。

この本はイギリスのブライトンに住んでいるブレイディみかこさんとその息子の「ぼく」との生活を軸に、世界では当たり前の多様性の課題や話題について触れています。

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 無料お試し版

 

「ぼく」と友人たちの中学校生活の最初の一年半について描いているものです。

 

正直、中学生の日常を書き綴ることが、こんなに面白くなるとは考えたこともなかった。

(「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー はじめに」より)

ブレイディみかこさん自身がこのように語っていますが内容はとても良いです。

 

ただの日記ではありません。

ブレイディみかこさんの息子の「ぼく」から見た様々な景色は当たり前でもありつつ、当たり前ではないものとして描かれています。

「ぼく」は、英国人と日本人の間に生まれた東洋人の顔をした中学生です。

これは人種的にはイエロー(黄色人種)に該当します。

そのためタイトルにある「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のイエローに該当する箇所に当たります。

 

モンゴロイド (英: Mongoloid) とは、人類学創始期の形態人類学における人種分類概念の一つである。日本では一般に黄色人種蒙古人種とも訳される。18世紀にドイツ人の人類学者ブルーメンバッハによって分類された五大人種に基づく。便宜的・慣用的・政治的にさまざまな場面で用いられる。

Wikipediaより)

 

私も昔アメリカはニューヨークのど真ん中で夜歩いていたら車に乗っていた若者たちに「イエローモンキー!xxxxx」と文字にできない罵詈雑言を浴びせられたこともあります。

一部の人の中には根深くこうした考え方は残っています。

この課題は今現在進行形で我々が目の当たりしている日々のニュースにも心当たりがあると思います。

 

また、ブレイディみかこさんの息子の「ぼく」は「白人」である「ホワイト」にも該当します。

英国人の父を持ち、英国で育つ「ぼく」は「白人」にも該当します。

タイトルにある「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の「ホワイト」に該当する部分です。

 

タイトルの「ブルー」はその時の心情を表したのか、本来の意味なのか読み進めていく中で読者である我々とともに理解を進めていけると思います。

そもそもバックグラウンドが単一でない多感な中学生が日々どのような生活をしているのか窺い知れるエッセイとなっています。

私の小学生時代を思い起こすと楽しくも「単調でシンプル」な生活だったなと感じています。

いろいろなことを感じる時期ではあるものの「ぼく」とは比べものにならないなあと感じました。

 

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「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」をオススメする読者

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は中学生と家族の日記というスタイルです。

ブレイディみかこさんの結構破天荒なところが所々見えるものの、アジア系英国人の息子「ぼく」の姿は親世代だけでなく、一人の人間としてどのように日々の多様性をとらえるかという点について大きな気づきを与えてくれると思います。

 

多様性に関して、日本人は「無関心」であると思いますので気づくことすらできないことが非常に多いと思います。

「ぼく」の日常的な体験を通して、「世界」の当たり前の多様性という点について理解を始めるにはとても良いエッセイだと思います。

 

こんな方におすすめ

  • 多様性ってなんなのか知りたい人
  • なぜ人種差別が存在するのか考えてみたい人

 

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ブレイディみかこさんはこんな人〜顔写真とともにもう一回

ブレイディみかこ

保育士・ライター・コラムニスト。1965年福岡市生まれ。県立修猷館高校卒。音楽が好きで高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年に新潮ドキュメント賞を受賞し、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補となった『子どもたちの階級闘争ーブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)をはじめ、著書多数。

(「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」裏表紙著者紹介より)

 

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」感想まとめ

私は外資系金融企業の中で多様性に関する課題や問題点の解決、またはサポートを行う組織を立ち上げ、日々数千人の同僚とともに活動をしています。

活動を始めた後に行った全社の従業員満足度調査では調査結果が大幅に改善するなど具体的な結果も残すことができてきました。

ですが私にとって「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は非常に多くの発見をする機会となりました。

エッセイ(中学生の生活に関する日記)なので非常に読みやすいです。

セクションごとに分かれているため、日々少しずつ読み進めても特に問題はないです。

とても「面白い」という表現は相応しくないと思いますが多様性が非日常である日本人にとって気づきを得られることは確実です。

もし読んだ後、高尚な感想が出てこなくても良いと思います。

感想は「人も国もそれぞれだなあ」で良いと思います。

大事なことは「そこにあることに目を向けること」です。

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