スピーキングを伸ばす大本陣シャドーイングについて
シャドーイングは無料で素材を揃えられます
英語を使ってお給料を貰うお仕事やバイトをして15年以上経ちました。
普段は外資系の金融に関する大きな企業に勤めています。
私が現在勤めている場所では英語が基本のスペックでないと仕事にならないので、英語を使ってというよりも英語が基本の能力として必要になります。
メールでのやり取りとして文章の読み書きだけでなく、電話会議も非常に頻繁にあるため口語での英語が出来なければ仕事はできません。
私はこれまで塾の講師や英会話の講師、大使館関連の同時通訳のお仕事などもしてきました。
英語を喋ることについてセミプロのレベルと言っていいと考えています。
今回は日本人にとって最も難関ポイントであるスピーキングについて焦点を当てて書いていきたいと思います。
なぜ日本人はスピーキングが苦手なのか
日本人は英語においてスピーキングが圧倒的に苦手です。
できる人はレア中のレアだと思います。理由は簡単です。
我々が中高で投下した時間を学校だけに絞ってみると900時間と言われています。
その900時間をスピーキングではなく、リーディングをメインに投下しているからです。
独学で英会話をペラペラにするにはアウトプットを増やしましょう。
日本で英語や英会話を習う人の勉強で最も特徴的なスタイルは「黙読」です。黙読です。
日本人が長年義務教育や高校・大学を通して英語を勉強している中で最も時間を費やしているのが黙読です。
単語を覚える時も黙読。たまに書いて覚える。
中高の英語の授業時間をまとめると900時間程度しかないそうです。
勝手な推察ですがそのうち9割以上が黙読の時間か日英訳をしている時間じゃないでしょうか。
日本人の赤ちゃんが言葉を喋るまでのプロセスを思い出して欲しいのですが起きている間、必死に色んな言葉にならない言葉を喋り続けて3歳くらいにやっと意味の通じる言葉を喋れるようになっていると思います。
自分の子どもとのコミュニケーションを振り返ってみると5歳以降は意思疎通をきちんと取れるようになっていると思います。
おおよそ4~5歳くらいまでに言語のスピーキング力がついてくると想定できるかと思います。
例えば5歳までの期間を軸に起きている時間のうち3時間喋っているとすると
3時間 ✖️365日✖️5年=5,475時間です。
先の中高の900時間の6倍弱です。
学校で習う英語では到底スピーキング力がつくはずもありません。
ましてや900時間の大半が読書と作文です。(9:1くらいだと思います)
なぜ苦手なのかギャップは見えてきたかと思います。
膨大な時間(6年+大学)英語に時間を「費やしてきた」にもかかわらず、スピーキングをする機会がなかったために、アウトプットとして世にさらしていないのです。
その結果、費やした歳月の長さと反比例して「できない」ことがスピーキングとなり苦手意識が生まれています。
またスピーキングの練習を熱心にやっていないことから発音も上手ではないのが特徴です。
ジャパニーズイングリッシュと呼ばれることも多いようにカタカナ発音が大半です。
これはジャパニーズイングリッシュで育ってきた人が先生になり、生徒に教える時もジャパニーズイングリッシュになるため、正しく英語の発音を教えられる先生がいないためだと私は思っています。
私の妻は帰国子女なのですが学校では相当苦労したそうです。
英語がネイティブなゆえに学校では異端となり、先生サイドから発音の手本にされるものの子どもたちからは好奇の目で見られます。
ALT(Assistant Language Teacher)が入っている学校だとネイティブの英語の先生がスピーキングの練習に参加してくれるため多少、生の英語スピーキングに触れる機会があります。
ですがこれも「リピートアフタミー」的な要素が強い座学(学校なので仕方ないことですが)であるため、英語のスピーキングを練習する機会にはほとんど及ばないと思います。
ジャパニーズイングリッシュに到達してしまうという皮肉な結果です。
仕事上、世界各国の人と接していますが軒並み英語のスピーキングもうまいです。(発音も聞き取りやすいというい意味で良い)
10年ほど前中国や香港にさかんに出張していた時、仕事で接する多くの人が英語を使いこなす姿を見て「日本が将来彼らの下請け工場になる」可能性があるのではと危惧したくらいです。
余談はさておきどうやってスピーキング力を伸ばすかという実践的な内容に入ってきたいと思います。
それは「シャドーイング」という訓練方法です。
既に過去の記事で何度か触れてはいますがこれまで深掘りはしてきていないので今回はシャドーイングについて書いていきます。
ただ一つ私が英語をやってきた中で最も大事なポイントをここでお伝えすると英語のスピーキングは「口で行う楽器の演奏」だと思ってください。
徐々にできるようになっていくものですし、うまい人の物真似をすることでスピーキング力は圧倒的に成長します。
シャドーイングは英語のスピーキング力を大改造できる
シャドーイングの説明は通訳・翻訳者を多数輩出してきたサイマル・アカデミーより引用をさせていただきます。
英語上達の効果が高いことで注目されている「シャドーイング」という勉強方法をご存じですか?もともとは同時通訳者のための訓練方法として知られていましたが、実はリスニングやスピーキングの強化など英語学習者にも大変役立つ勉強方法なのです
(「英語上達のコツ シャドーイングとは」SIMUL CAFEより)
シャドーイングってなに?
シャドーイングとはShadowingと書きます。影のShadowにingをつけたものです。
影という文字が入っているように影のように聞こえてくる音を追いかけて発音をすることをシャドーイングと呼びます。
シャドーイングがなぜ効果的なのか
日本語と英語には多くの違いがあります。
発音、リズム、音の強弱、イントネーションなど日本語と英語には全く異なる要素があります。
極端に言ってしまえばこの4つさえ抑えれば、英語っぽくスピーキングをすることができます。
この4つの違いを真似すること(=シャドーイング)で一気にジャパニーズイングリッシュから卒業ができるようになります。
今までジャパニーズイングリッシュのリピートアフタミーをしてきた人にとってはシャドーイングはネイティブの発音を真似るのでものすごく難しいことだとは思いますが効果は抜群です。
効果が出るエリアは主にスピーキング、リスニング、語彙力です。
シャドーイングはスピーキングの中で即興力(その場その場で発言する能力)を鍛えることはできないので即興力を鍛える方法は後述します。
スピーキング
英語の音を聞いて真似をしてスピーキングを練習しますので最も効果が出るエリアです。
大事なポイントは「真似る」です。
聞こえてくる音の物真似(発音、リズム、音の強弱、イントネーションに加えスピード)をすることが重要です。
この物真似が上手くなればなるほど英語のスピーキング力が伸びていきます。
リスニング
英語の物真似が上手くなればなるほど聞こえてくる音がだんだん増えてきます。
スピードにもなれくるので意味のわからない単語が出てきても最終的には推測ができるようになります。
「ねはんじゃくじょう」という日本語の会話の中で聞いても意味がわからないと思いますがこれが仏教に関連する話題の中で出てきたとすると「仏教関連」の単語だなと意味が取れるように英語でもこれに近いことができます。
語彙力
物真似が上手くなると同時に単語や熟語の意味をどんどん捉えられるようになってきます。
シャドーイングの能力が上がれば上がるほど、語彙力も比例して成長をしていきます。
シャドーイングの具体的方法
それではいよいよ具体的な練習方法について触れていきます。
シャドーイングは以下のステップを踏んでいきましょう。
シャドーイングの具体的お作法
- テキスト付きの音声を用意する
- テキストを見ないでただ聞く
- 1回目テキストを見ないでシャドーイングをする
- テキストを見て全文の理解をする
- 2回目テキストを見ないでシャドーイングをする
- 2回目以降何度も何度もシャドーイングをする
大前提としては集中力は続かないので1分〜3分くらいに素材は区切って#1~6をやりましょう。
同時通訳者は本番では10~15分に1回他の同時通訳者とバトンタッチをします。
それほどエネルギーを使うものなのでいきなり多用はしすぎないように気をつけてください。
テキスト付きの音声を用意する
必ずテキスト(トランスクリプトと英語では呼びます)付きの音声を用意しましょう。
またレベルは文章を読んで7割程度意味がわかるもの選びましょう。
以前はESL(English as a Second Language)というPodcastが無料で配信されていたのでこれをお勧めしていました。
スピードも速くないので追いつくにはちょうど良い内容でした。
現在はESLが有料化してしまったので今回紹介するのはTEDです。(無料です)
TEDは題材もそれこそ宇宙から日常のくだらないことまでスピーカーによって様々な内容が用意されています。
またテキストも用意されています。
世界各国の英語話者の発音に慣れるのにもちょうど良いと思いますので現段階ではTEDをお勧めします。
もちろんTED以外の素材を使っても良いですが基本はここにある6つのステップを踏んでください。
↓TEDはこんな感じです。(下の部分に見える"Your hands,..."がテキスト(トランスクリプトです))
テキストを見ないでただ聞く
まずはテキストを見ないでただ聞きましょう。
TEDは字幕を出すこともできるので最初は字幕を隠してください。
日本語の字幕がある場合もありますのでそれは意味の把握をする上でもとても役に立つと思います。
1回目テキストを見ないでシャドーイングをする
次にテキストを見ずに聞こえてきた音をそのまま真似してください。
シャドーイングは本来音のみの真似ですがTEDの場合、映像がついています。
発表者の口の動きごと真似をしましょう。
子どもは親の口の動きを見て音の真似をしています。
我々は大人というアドバンテージを生かして、相手の口の動きを真似して英語の音に近い発音、イントネーション、音の強弱などを調整しましょう。
テキストを見て全文の理解をする
シャドーイングの1回目を終えたらテキストの意味を理解しましょう。
TEDは英語でテキストを用意されている他、日本語テキストを用意されている発表もあります。
辞書を一回一回引くのが苦手な方は日本語テキスト付きのものから始めてみても良いと思っています。
2回目テキストを見ないでシャドーイングをする
テキストの意味を全文理解できたら2回目のシャドーイングをします。
意味や背景を理解しながら発表者になったつもりでシャドーイングができるような人はもうすぐにスピーキング力がついてきます。
シャドーイングでは物真似を意識することが最も重要です。
なり切るレベルまで2回目以降にできるようにもっていくために2回目は可能な限り自分で何ができたか、何ができなかったか得手不得手は見つけておきましょう。
2回目以降何度も何度もシャドーイングをする
多くのシャドーイングの勉強法であまり勧められていないのが不思議なのですが2回目以降も何度でも練習をすることの方が重要だと思っています。
私は1000回同じ内容の練習をしたことがあります。
当時その文面を録音して、友人に「このネイティブが言ってることわかる?」と聞いていました。
「私」が読んでいることに気づかなかったのでその文面は本当にネイティブが読んでいるレベルにできていたのだと思います。
このようにシャドーイングで使った素材は一回切りにせず、何度も何度も練習し物真似から自分のものへ昇華させることが重要です。
そうすることで得られることは「恥ずかしさがなくなる」、「その発表をネイティブのようにできる」ことです。
この2つができるようになればもうあなたのスピーキング力は日本人離れしたものになります。
シャドーイングを行う上での注意点
一点だけ注意をして欲しいのはシャドーイングで最も効果が出る人はある一定の英語力を持った人です。
基本的な英語力がある方においてはスピーキングを伸ばす強力なツールとなります。
まず英語の基礎力を身につけたいという人は以下の記事をご覧ください。
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その他オススメのスピーキング練習機会
シャドーイングで人の英語を自分のものにできるようになってきたら、人に向かって自分の英語を使ってみる訓練に移行することをお勧めしています。
スピーキング力は即興力も必要となるのでスピーキングをする上での即興力を鍛える練習となります。
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スピーキングを伸ばすシャドーイングまとめ
スピーキングを伸ばすには発音、リズム、音の強弱、イントネーションを英語に近づける必要があります。
そのスピーキングを伸ばすのに最高の機会はTEDでシャドーイングをすることです。(何せタダ)
無料でできてしまう最高の英語スピーキングのトレーニングなのでぜひやってみてください。
私は英語を20歳の時にABCからはじめ、今では英語で世界中の同僚と仕事をし、英語でプレゼンをするようなレベルになりました。
将来的に英語を話せるようになりたい人にとって、この記事を読んでいる今が最も若い日です。